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執筆者の写真atelier-yazd

● 刺激を貰ってまいりました

札幌から戻って、お客様への出荷を終えて、ホッとしたのと同時に腑抜けモードに入っておりました。一度、腑抜けモードに入るとなかなか復活しないので、良い刺激を得たいという気持ちが高まっていた今週。

阪急百貨店梅田店10階スークさんにて開催されている『モヒカンポシェット』さんの「ドローイング展」を今日、観てまいりました。


緊急事態宣言が今にも出てしまうという状況で、百貨店さんが閉まってしまう可能性が高く、来週だと見れないかも!と思い、衝動的に近鉄電車に乗って向かった久しぶりの梅田です。


『モヒカンポシェット』さんは、立体裁断のお洋服を作っておられます。

熊本県にお店兼工房を構えて、全国各地で展示販売をされているお二人はご夫妻で、貴容子さんが立体裁断のお洋服を作り上げ、栄一さんが、展示の際のディレクション全般、オブジェ的な部分を受け持っておられます。

とにかく、このお二人が作る世界観が凄いのです。



昨年の6月、阪急さんでの靴職人『Ippo ippo 』さんとの二人展の際に、向かいのブースで展開されていたのが、お二人に出逢ったきっかけです。

その際の搬入時、展示スペース前にオブジェが組まれて行く様子に「何やら凄い感じがする」と思い、ちらりちらりと眺めておりました。

搬入後のほの暗いブースに近づいて見てみると、見たことないデザインのお洋服が沢山並んでいて、その子たちのどの子も同じモノが無いのです。しかも、その素材が大島の紬の生地だったり、複雑なコットンレースだったりと、質の良い素材、通常の生地屋では、見ることの出来ない素材たちで出来ていて、度肝を抜かれました。

オープン初日から、大勢の顧客さまがいらっしゃって、試着をされて、飛ぶように、お洋服たちが旅立って行くのを見て、素晴らしいなあと、眺めていたのですが、何より、お客さまが本当にきらきらした表情で往来されているのが、本当に印象的でした。



お二人は、毎回テーマを決めて、制作をされます。

そのテーマ毎に全く表情の違う洋服が出来上がっていくのですが、これがまた本当に見事で。昨年、6月に見た洋服たちと、12月に見た洋服は、フリルなどのディテールは重なるけれど、デザインも雰囲気も全く異なるものでした。


お洋服に使っている素材は、コレクション後に市場に出回る良質で安価な素材を海外に買い付けに行っておられるとのことで、素材の良さは、なるほど納得でした。

このコロナ禍で、渡航が難しくなっている為、昨年からは、日本の生地屋さんを改めて廻る事で、これまでに見つけられなかった面白い素材を入手出来ているとの事です。

手に入れた素材を、その良さをさらに引き立たせて活かすデザインになっているのも目を見張ります。


今年のテーマは、年間を通して「ドローイング」との事。

先入観を持ち過ぎずに伺いたいと思い、インスタグラムは、がっつり見ないで、ちょこちょことだけ眺めていたのですが、実物はやっぱり凄かったです。


各所に広がるドローイングの海。

それは、美大卒の栄一さんが、マッキー(マジックペン)で描いたとの事で、更にびっくり。立体裁断の洋服たちは、各所にフリルやギャザー、タックが入って、女子要素はばっちりあるけれど、甘くなり過ぎず、フォルムが綺麗で、見ていて楽しいし、すごく面白い。

その洋服たちの上に栄一さんのドローイングが施されていて、「着ることが出来る絵」になっていました。

インスタで気になっていたシャガールの絵をモチーフにしたスカートは初日に旅立ったそうで、見れなかったのが残念です。


そして、モヒカンさんのお洋服を眺めていて、いつも、感心してしまう事は、デコラティブなデザインで有りながら、とても着易い作りになっている事です。

貴容子さんが、もともと理学療法士をされていたことが有る故だと思いますが、沢山のボタンの裏手は、スナップボタン留めにしているという気遣いがあったり。

着た時に身体に沿いつつも、背中に施した可愛さのデザインでもある無数のタックと同じ箇所に横にゴムを渡してあるお洋服は、それによって、背中を曲げる時の動作の動きを妨げない仕組みになっていたり。

例を挙げれば切りがない位に、「凄い!」がいっぱい詰まった洋服たちと空間。

このお二人の頭の中はどうなっているんだろう?と圧倒されるばかりでしたが、実際に観に来れて本当に良かったです。


そして、伺った際、昨年、ヤズドの鞄にもご縁を下さった、モヒカンさんの顧客様が来られていて、嬉しい再会もさせて頂きました。皆さん、良いお顔をされていて、ホッとしつつ、嬉しい気分にさせて貰えました。ありがとうございます。

コロナによって色んな制約や、世の中の不条理に腹立たしくなって仕方ない事がままあります。ですが、モヒカンさんのお洋服は、「何とかなる!」「負けへんで!」という気持ちと力が貰える気がしました。


自分の中の女性要素を肯定出来ないヤズドとしては、まだモヒカンさんのお洋服に袖を通す事が出来ていないのですが。モヒカンさんのお洋服は、フリルやギャザー、細かなタックやレース素材、ふわっふわなシフォン素材など、「永遠に女子で居れる事」という気持ちに見ているだけでさせてくれる洋服です。

でもそれは、儚さとかでは無く、女性の強さを感じさせてくれるのです。どんな年齢になっても、可愛く、そして、強く居られる女性の為の戦闘服。

自分の中で、色んなものが削ぎ落された時に、いつか着てみたいと思っています。



色んな余韻を維持したかったので、モヒカンさんのイベントだけを観て、直ぐに大阪からトンボ帰りで三重に戻りました。腑抜けモードからやっと切り替えが付いたので、明日から、ぶいぶいと制作に向かいます。お待たせしているお客様、どうぞ、今しばらくお待ち下さいませ。


★モヒカンポシェットさんのHP



明日以降で、いくつかの都市では、緊急事態宣言が出るようです。

radikoやYouTubeで日々のニュースを聞きながら、現政権の無能さ、あらゆることへの対処の酷さに怒りしかありません。今年は、選挙が有るという微かな希望だけは持っていますが、ジレンマを感じる毎日です。

翻弄される業種の方がたにとっては、堪らなく腹立たしく、悔しい現状だと思います。

何も出来ない自分では有りますが、目の前の仕事に向かいつつ、おこがましいですが、負担の掛かっている業種の方へのサポートがいつか出来る様に、自分自身も踏ん張っていようと思う今日この頃です。皆様もどうぞ気を付けてお過ごし下さい。




テント表の麻布へのドローイング。一部のモチーフは縫って立体的になっています。ハサミやミシンの細かな立体モチーフに悶絶でした。

レースをふんだんに使ったブラウスや、ふわっとした生地を活かした洋服たち。

随所に立体裁断の凄さが散りばめられています。

作りを見てるだけでも楽しい。

年明けからの栄一さんのドローイングの試作の数々。

綺麗な麻生地とドローイングのブラウス。これがマッキーだとは。

シャガールの絵をモチーフにした立体とドローイング。







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