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執筆者の写真atelier-yazd

●新型リュックとキツネの話

いつの間にか、ゴールデンウィークを迎えておりました。

緑が凄い勢いで芽吹いているのを見たり、田舎の穏やかな陽気の中にいると、うっかりコロナの事を忘れそうになります。

こんな中でも、危険と隣り合わせで働いていらっしゃる皆さま、諸々の自粛体制で、先が見えない業種の皆さま、私如きが何も言える立場ではありませんが、どうかこの状況を切り抜けて、無事に過ごす事が出来ます様、お祈り申し上げます。

かくいう自分自身、経済的には切迫して来ていますので、何とか生き延びれる様にせねばと思っております。


とか言いつつ、現在の私は、ひたすら鞄を作っております。

コロナがやって来てから、収入が激減しておりまして、銀行残高を見ては、ぎょっとしてはいるのですが。

これまでにかなりの貧乏暮らしを経験しているので、「あとひと月はいけるな」と安易な考えに走っています。多分、現実逃避も入っています。

もっと必死に対策を立てねばならないと思いつつも、これ迄取って置いた素材たちを活かすタイミングだ!と、逆に開きなおって、新型の鞄を黙々と作る日々となっています。


今、リュックを作っています。

鞄作りの世界に入った動機が、自分自身が持ちたいリュックを作りたかったという事も有り、鞄の中でもリュックはとても好きなアイテムです。

これまでにも色んな種類のリュックを作って来ているのですが、今手掛けているのは、以前、札幌でお会いしたお客さまからご要望頂いていたもので、私自身も欲しいと思っていたリュックです。


長い事、定番で作っている「フロントポケットトートバッグ」という鞄があるのですが、このトートバッグをリュックにして欲しいというご要望を随分と前にお聞きしておりました。

このトートバッグ、私も本当に好きな鞄なのですが、色んな素材を詰め込み過ぎて製作しているので、「重い!」とお叱りを受け続けている鞄です。

ご購入下さっている皆さま、本当に申し訳ありません。

なので、これをリュックにしてしまうと、パーツがより増えてしまうので、もっと重くなるかもなあという懸念から、なかなか手を付ける事が出来なかったのですが、この時間が出来たタイミングでじっくり作ってみようという気持ちになりました。


元々のトートバッグは、横長タイプなので、それを縦長タイプに変更して、トートバッグとしても、リュックにしても持てる、男女年齢問わずに使える鞄を作りたい!と思い、ここ半月ばかりチャレンジして来ました。

何度かサンプル試作をしつつ、第一号が完成しました。


何点か修正したい箇所が見つかったので、まずは、使用感を試す為に自分用として、持ち歩いてみているんですが、これが結構良いのです。

自画自賛かもしれませんが、この子、私はかなり好きです。

ちょっと無骨感も有りますが、箇所箇所に丸みが入っているので、いかつすぎない。でも、男性が持ってもきっと格好良いと思うんです。

正直、決して、決して、軽くは無いのですが、幅広いショルダーベルトで背負う事が出来るので、とても楽に持てます。そして、持っていて、何か楽しいんですね。


メインとなる胴体の素材には、トートバッグと同じく、デッドストックのチェコ軍の麻袋生地を使用しています。このゴツゴツ感が帆布には出ない雰囲気なのと、革パーツとの相性がとても良いので、10年以上、この鞄に使っています。

私の師匠が、軍モノと革とのコンビネーションでモノを作るのがとても上手な方で、修行時代に軍モノ素材の良さを色々と教えて頂きました。


軍モノ素材は、素材の持つ無骨な雰囲気と、あらゆる厳しい環境下にあって、耐久性がある事が魅力です。

しかし、色んな戦いの現場に使われるモノである事は否めず、かつては、どうにも、モヤモヤした気持ちで触れていました。

ですが、素材を平和利用出来るならば、それはそれで、素材の救済策でも有るかもという気持ちで、今は使っています。

凄く安易な切り替えかもしれず、そこに異論をおっしゃる方も居られるかもしれません。ただ、別の姿に生まれ変わる事で、素材の成仏となるのではないか?という、そういう観点です。

「素材を殺す奴は即逮捕。素材は活かしてなんぼ。」という素材警察の人たちの中に居て、物作りを教わってきたので、見つけた素材は、出来る限り活かして使いたいと思っています。

その素材が、別の人生を歩める様に、活かしていきたいと思うのです。


話が逸れましたが、明日から新型リュックの第一号を微調整した完成形のリュックの準備に取り掛かります。

良い鞄になる様に、気張ってお作りしたいと思っています。

今後のイベント状況が見えない中ですが、次に参加出来るイベントには持参する予定ですので、実際に手に取って、見て頂けると嬉しいです。



で、ここからは、余談です。

私は、工房から自宅まで、車で移動しています。

距離にして約5キロ、時間にして15分くらいの距離感です。

その帰宅での道中、夜中から明け方近くの時間に、ちょこちょことキツネに会うのです。


最初に会ったときは、芝犬の迷い犬かな?と思ったんですが、じっと見てみると、鼻先がどこか犬とは違うし、何より尻尾が太い。

ある時、お互いにじーっと見つめ合って、「あー、キツネだわ」と確認出来ました。どうやら夜な夜な山から降りてきて、街中でご飯を探しに来ている様です。


何度か会っているごんちゃん(キツネ)は、とても賢くて、交差点に入って、信号待ちをして、横断歩道を上手いこと渡って行くんですよ。「嘘つけ!」という声が聞こえますが、これはほんまの話です。

ある夜中、交差点で信号待ちをしていたら、山から降りて来たごんちゃんが、いつものように青信号で横断歩道をてけてけと歩いて行きました。

隣の車線で信号待ちをしていた車の運転手さんは、その光景をビックリして見つめていました。それを横目で眺めて、「いやあのコ、ああいうコなんすよ」と悟った目で頷いてみせた私です。


最近まで夜が結構寒かったからか、会う事が出来ずにいたのですが、つい先日、自宅近くの駅近辺の道路で久々に遭遇したんです。

いつも会うごんちゃんより、少し身体が小さい、大人になりかけている様な感じの若いキツネ。

ごんちゃんは、要領が良く、車の前をスイっとすり抜けて横断して行くのに、この新顔キツネ君は、ちょっとどん臭い。

私の車にダイレクトに突進して来たんで、「わおー!」と叫びながら、急ブレーキを掛けました。

「うっわ、まじですんません!」という感じで、こちらをずーっと振り返り、振り返りして去っていくごんちゃん2号。

その姿が余りに切なく、可愛くて、「轢かれたらアカンで!」と、ずーっと母の気持ちで見送ってしまいました。

夜明け前の和みの光景。

また会おう、ごんちゃん2号。




○ 新型リュックの第一号サンプル。ここから微調整をかけていきます。


○ チェコ軍の麻袋を手洗い。ゴツいので大変ですが、コインランドリーで洗って、洗濯機を故障させてしまった事が有るので、それからは専ら手洗いです。


○ ショルダーベルトは思う様な色のモノが無いので、生機の綿テープを洗いにかけ、その後、染料を2色混ぜ合わせて、自分で染めています。

大量染める事が出来る環境では無いので、一回の染めで、鞄一個分。効率悪し。


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